スズキバイオリン製 Three S
以前ご紹介したスリーエス(
file No.006)。
たいへんお気に入りの一本で、その後も使用頻度が高いとの事です。
当初はナットの消耗によるチューニングの不具合でのご相談でしたが、チェックの際にブリッジの割れが判明しましたので交換となりました。
コンディション
◯ブリッジ中央の割れによるサドルの傾き
◯ブリッジピンホール付近での割れの状態
◯サドルスロットも弓なりに変形
ブリッジの剥離
◯アッセンブリーの取り外し
◯ヒーターとスチームを当てながらブリッジを剥離
ブリッジの切り出し
◯オリジナルと同じ材(ハカランダ材)を用意
◯各部(表面R・サドルスロット・ピンホールの各レイアウト)を計測
◯材に罫書線を入れる
◯バンドソーでカット
◯オリジナルのブリッジをテンプレートにしてトリマーで切削
◯オリジナルのブリッジと同型にアウトラインをトレースしておく
ボディ側木地の整地
◯弦長を計測してブリッジ位置を確定する
◯切り出したブリッジをボディに固定
◯ナイフで罫書線を正確に入れる
◯罫書線に沿って各種ノミとスクレイパーで接着剤と塗装を剥離
◯接着面の整地完了
ブリッジの成型
◯ブリッジ両側のスロープをおおまかに切削
◯ブリッジ表面R(20"R)を切削
◯オリジナルからスロープの位置をトレースして罫書線を入れる
◯各種スクレイパーでスロープを切削
◯ベリー部のカーブ位置を罫書く
◯カーブを切削
ブリッジの接着
サドルスロットの切削
◯XY軸の傾斜角度をジグベースと合わせる
◯ジグにギターとトリマーをセット
◯オリジナルのサドル幅と同じ2.5mmで切削
◯慎重に深さを計測して切削完了
ブリッジピンホールの成型
◯専用のリーマーにてピンホールを拡張
◯専用のチャムファーで面取り
◯弦の導出口を切削
アッセンブリーの組み込み
◯L.R.Baggs製AnthemSLのピエゾPU用の穴を開ける
◯ブレイシングの位置に気をつけて「ハの字」に角度をつける
リボンタイプのピエゾPUを使用する場合は断線防止の観点から必ずこの角度で穴あけをします。
ピエゾPU(リボンタイプ)のご相談によくあるアースノイズの原因は、PU本体を縦穴に90°に取り付けられた事による断線がほとんどです。
またピエゾPU(リボンタイプ)の先端は構造上、振動を感知しない部分です。
音質のばらつき(高音弦と低音弦)防止のためこの部分にサドルが乗らない様に「たすき掛け」状にセットします。
◯ピエゾPU用穴の成型
◯丸形の穴を角形ヤスリにて成型
こちらも平型のピエゾPUに穴の形を合わせる事によってさらに寿命の保護と音質のばらつきを無くすための作業です。
◯両面テープの交換・再接着
◯表面を研磨
サドルの成型
◯牛骨(オイル)のブランクから切り出す
◯表面R(10"R)を切削
◯各弦のオクターブを計測して罫書く
◯罫書線にあわせて切削
◯研磨
ナットの成型
◯ナットを取り外す
◯接着面の整地
◯専用のノミとヤスリで接着剤を取り除く
◯牛骨(オイル)のブランクから削り出す
◯オリジナルから弦の間隔をトレースして弦溝を切削
クリーニング
完了
豊かなレンジ感と振動が感じられる様になりました。
もともと雰囲気のある音質でしたが危惧していた音質の方向性に変化はありませんで、さらに個性的な音質が強調されていると思います。
今後ますます弾くことが楽しくなるようなギターに仕上がりました。
全国各地でこの音を轟かせていただきたいと思います。